愛着という言葉の意味は、慣れ親しんだ物事に、深く心を惹かれ、離れがたく感じることをいいます。幼い頃からなぜだか捨てられずにずっと手元においてあるぬいぐるみや、旅先の小さな古本屋で見つけた見知らぬ作家の一冊の本。それらの価値を決められるのは、ものを手にした場面を経験した者だけでしょう。そして、当事者にしか分からない愛着という感情は、自分だけにしか経験できない深い高揚感に包まれたものだといえます。
ブランド、という言葉を誰しもが認める一級品を指す言葉と解釈したときに、愛着は正反対の位置にいる言葉ではないでしょうか。ものに対する価値を決める時に、世の中の流れとしてはブランドというある種の称号が一つの基準となっているかもしれません。しかし、ものを選ぶときの基準として愛着を意識してみると少し世界が変わっていくような気がします。
例えば、10年後に自身の暮らしの中にするっと溶けこんでいる景色が見えるかどうかを想像してものを選んでみてください。そんな素敵な運命とも言えるものに出会うには、たった数日のこともあれば、数年かかることもあるかもしれません。けれども、愛着という、”深く心を惹かれる”ものに出会えたときの経験は、何にも変えがたいものとなり、私たちの目に映る一つひとつの景色さえもが美しいものになっていくでしょう。
愛着という言葉を考えたときに、それは一過性の感情ではなく、そこから広がっていく豊かな暮らしに通ずる概念なのだと、私たちはゆっくりと実感していくのかもしれません。
我が家に帰ってきた時に、愛着があるものとふと目が合うとなんとも言えない幸福感に包まれることがあります。そんな感情の動きを大切に過ごしていきましょう。
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